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【声明】国民投票法改正案の採決は行わないことを求めます

【声明】 国民投票法改正案の採決は行わないことを求めます

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 憲法改定の手続きを定めた国民投票法の改正案が、衆議院憲法審査会採決、衆議院本会議採決を経て参議院に送られ、今国会で成立してしまう可能性が高まりました。この改正案には公職選挙法に合わせ、駅の構内やショッピングセンターに「共通投票所」を設置できることや「洋上投票」の対象拡大なども盛り込まれています。

 これまで護憲を掲げる野党は協調して国民投票法の問題点の議論を求めてきました。ひとつはCM規制についてです。スイスなど、憲法改正が頻繁に行われる国では一切のCMが禁止されています。このルール作りをしなければ、財力のある側が物量で優位に広告を展開することも可能です。この点が、「憲法をお金で買う」ことを許すことになると批判されています。もう一点、看過してはならないのは、最低投票率も定められていないことです。極端に言うと10%の投票率なら5%の賛成者で憲法が変えられてしまうことになります。安易な改正に歯止めを掛けるために現行憲法では、96条で衆参各議員の3分の2以上の賛成を経た後、国民の過半数の賛成を必要とし、厳しく制限している点とかけ離れています。ところが、これらについて附則に「3年後を目処に措置を講ずる」と入れる修正案が受け入れられたことで立憲民主党が賛成に回ってしまい、衆議院で可決してしまいました。しかし、これまで一切の議論を拒否してきた与党が、安易な改正を抑止するような措置を講ずるとは考えにくく思われます。

 私たちは、これまで一貫して安倍政権下で発表された自民党「日本国憲法改正草案」(以下「自民党改憲草案」)に反対してきました。自民党改憲草案は、今国会で多くの反対の声が寄せられた、入管法改正案でも指摘されている拷問に関しても、憲法36条「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる」から「絶対」が削除され、拷問ができる余地が残るなど、きわめて危険なものだからです。この草案は、現行憲法の基本原理である国民主権・平和主義・基本的人権の尊重をすべて奪ってしまう内容です。天皇を国家の元首と定め、国防軍を設置し、人権は公益に反しない限りにおいて(国が認めた範囲で限定的に)認められる、という時代錯誤の改憲草案です。菅内閣においても自公政権である限り、改正に際して、自民党改憲草案にもとづく提起がなされるであろうことに変わりはないと推察されます。

 自民党内でも異論・指摘があり、安倍政権下で4項目に絞ったもの(いわゆる「改憲4項目」)を発表しましたが、国民投票法改正案の採決自体が、戦前の国家体制への回帰の足がかりになるであろうことに変わりありません。

 9条には自衛隊の存在を明記するだけと言っていますが、後から加えられた条文が優先される法原理から、自衛隊の存在を前提に、自衛の枠を超え、関係国支援として戦争にも参加し、徴兵すら行われる可能性があります。また、世論調査では、このコロナ禍で緊急事態条項が必要との回答が増えている状況が報道されています。しかし、現行の憲法下でも十分にコロナ対策は行えることは、多くの憲法学者、医療従事者、政治家からも指摘されています。

 国民投票法改正案の成立は、世界を戦争へと巻き込んだ大日本帝国憲法下の時代に日本のみならず世界をも逆戻りさせてしまう第一歩です。国民がコロナ禍で苦しんでいるいま、最優先するべきことではありません。

 いま行うべきは、「命と人権」を最優先し、ほんとうに必要なコロナ対策をはじめとした政策に注力することです。“不要不急”の国民投票法改正案の採決は行わないよう強く求めます。

以上

 

 

2021年5月18日

日本出版労働組合連合会

中央執行委員会

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