出版および出版関連産業ではたらく人々の労働組合連合体

出版産業

出版労連第136回臨時大会/2021年春闘宣言

2021年春闘宣言

 「将来に続く何らかの布石」を打つこと。これが昨年の春闘宣言で私たちが採択した言葉です。私たちはこの1年、新型コロナウイルス感染症の脅威により、暮らしや働き方が急激に変わるということを体験ました。人と接触する機会を減らすことが急務となり、働き方の変更とともに、集い、話し合い、連帯していくという組合活動の基礎も大きな影響を受けています。通勤するだけでいのちの危険につながりかねない状況に置かれ、日常業務だけでも精一杯で、将来への布石を打つどころではなかったかもしれません。

 しかし、出版流通の現場から報告されたように、発売日の変更や延期はありましたが、出版物流は止まることなく、書籍・雑誌を作り、読者へ届けてきました。大きな変化の中にあっても、組合活動の灯を絶やさない心強い報告もありました。私たちが黙っていても、国や自治体、経営陣は働く人に行き届いた対応をしてくれません。大きな変化がもたらされるとき、大きな影響を受けるのはより弱い立場の人たちであることも忘れてはいけません。働く仲間と物理的に分断され、声を上げることがままならない今こそ、知恵と工夫で連帯し、萎縮せず議論を重ねて具体的な行動に移していきましょう。

  2021年春闘方針の柱は、コロナ禍でも納得できる労働条件・労働環境の改善にとりくもうということにあります。初任給の引き上げと賃金のベースアップは出版関連産業の担い手となる人の確保のためにも、要求化をめざしましょう。均等待遇の実現は、2021年4月より中小企業にも適用となる改正パート・有期雇用労働法を活用しましょう。
 
 会社主導で緊急的に導入された在宅勤務などの制度化や、働き方の改善を求める動きもあります。各単組・小共闘から寄せられたさまざまなとりくみからは共通する課題や論点も多く見出された一方、勤務形態や業務、管理体制などが各社で異なるのが実情です。臨時大会で確認した「コロナ禍における在宅勤務制度対応指針(案)」にポイントをまとめましたので、要求づくりに活用しましょう。コロナ禍の在宅勤務は、いのちの問題です。在宅勤務が困難な職場の働き方も考え、改善にとりくみましょう。

 定年延長や継続雇用も、賃金体系も含め非合理的な格差のない労働条件を追求しましょう。職場ごとの状況が異なるため、望ましい一つの方向性を打ち出すことは難しい現状にありますが、雇用の確保と労働条件の底上げを軸として、各単組で議論し要求していきましょう。

 ハラスメントの防止・根絶は、中小企業を含め法整備が進みつつありますが、フリーランスが対象外であることなど、未だ道半ばと言わざるをえません。出版女性会議や出版ネッツから報告されたように、さまざまな形態で働く人の権利を守るためのとりくみをさらに進めていきましょう。

 政府は2020年までに女性管理職を3割にとする目標を、「2030年までのできるだけ早い時期に」と先送りを決めました。出版労連は、新聞労連、民放労連、メディアで働く女性ネットワークの4団体の連名で民放連・新聞協会・書協・雑協のメディア業界の4団体へ「業界団体および加盟社の女性登用についての要請」を提出しました。この報告記者会見の直前、森喜朗氏(東京オリンピック・パラリンピック組織委員会会長:当時)による女性蔑視発言がありました。森氏の発言を下支えしてきているのはメディアも含めた日本の社会構造です。これは女性だけの問題ではありません。男性中心の社会構造を変え、ジェンダー平等を実現しましょう。

 私たちがこれまでとりくんできたさまざまな課題は、コロナ禍で遠景へ退いたかに思えるものもありますが、依然として残り続けています。表現の自由が脅かされ、民主的な手続きがないがしろにされることも多く聞かれます。労働組合の活動は、個別の労働条件はもとより、社会そのものを変える力になりえます。私たちは同じ出版関連産業で働く仲間であると同時に、異なる考えを持ち、異なる職場や条件で働く者でもあります。異なる個人として思いを伝え、共有し、ともに行動できる部分についてはいっしょに声をあげて、一つひとつの課題にとりくんでいくことができます。想像力と工夫をもって緩やかなつながりを保ち広めていきましょう。

PDF:210219春闘宣言【印刷版】

以上

2021年2月10日

日本出版労働組合連合会

第136回臨時大会

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