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大日本図書株式会社による教育長等の接待について(見解)

大日本図書株式会社による教育長等の接待について(見解)  

2022.10.24 日本出版労働組合連合会(出版労連) 教科書対策部長 小森浩二

PDF:20221024kenkai   大日本図書株式会社(以下大日本図書)が、教育長らに接待を行っていたことが明らかになった。出版労連教科書対策部は、この問題は以下に述べる観点から軽視できないものであると認識し、ここに見解を表明する。   (経過の概要) 2022年9月30日および10月7日の各メディアの報道によれば、次のような経過であった。 1. 2022年7月1日に、大日本図書営業担当幹部らが、茨城県五霞町(採択地区としては茨城第11地区)の教育長およびその知人の元中学校長と会食し、その代金1人当たり約9,500円を同社が支払い、1,600円の菓子を渡していた。 2. 接待された2名は教育長とその知人の元校長であった。 3. 接待の席上、教科書採択の話は出なかった。 4. 接待を受けた2名は、後日その費用を大日本図書の銀行口座に振り込んだ。 5. 当該教育長は、10月3日に辞職願を町長に提出し、7日付で退職した。   (見解) 1. 大日本図書及び同社が加盟する一般社団法人教科書協会が、9月30日にそれぞれ公表した「お詫び」「令和4年9月30日付の読売新聞報道について」でも述べているように、自ら合意した自主ルール「教科書発行者行動規範」に違反するものである。 2. 教科書採択は、その内容の如何によるべきであって、接待などで左右されてはならない。それにもかかわらず、同様の問題は前出の自主ルール策定後も複数の教科書発行者により、何度か起こっている。こうした問題が、教科書採択制度の構造に根差していることを指摘しなければならない。 3. 教科書無償措置法に基づく義務教育教科書の採択が1964年に施行されて以後、教科書業界では与党や政府高官への献金をはじめ、最近も2016年の「白表紙問題」、教育課題アドバイザー制度といった問題が繰り返され、出版労連とその傘下の教科書労働組合共闘会議(教科書共闘)は、これらの問題を強く批判し、その清算を要求してたたかってきた。今回の問題は、その体質がいまだに払拭されていないことを示すものである。これを機に、教科書業界の体質を根本的に改めるべきである。各発行者に対し、そのための努力を要求するものである。 4. 今回のような問題の再発防止のためには、教科書発行者の自覚が必要であることは当然だが、それに加えて、少なくとも次のような教科書制度の改革が必要である。各発行者の自覚に委ねるだけでは、いずれ再発する可能性は高いと言わなければならない。 (1) 義務教育教科書で行われている現行広域採択制度(共同採択制度)を改め、高等学校同様、学校ごと採択にすること。高等学校では実施しているにもかかわらず、義務教育では不可能であるとの文部科学省の主張は成り立たない。この制度は、4年ごとに「オール・オア・ナッシング」「ウィナー・テイク・オール」という結果をもたらすきわめて不合理な制度である。 (2) 教科書価格を大幅に引き上げて適正化すること。この問題の根本には、児童生徒数の減少と価格の抑制による教科書業界への先行きに対する経営の不安と懸念がある。文部科学省の来年度の概算要求でも、引き上げ率は1.4%にすぎない。文部科学省は物価高騰、特に用紙代の高騰を考慮したとするが、全く不十分である。その意味では今回の問題を引き起こした根源は国家政策にあると言わなければならない。 5. 今回の問題を利用して教科書発行者の正当な営業活動を萎縮させるような動きがあれば、断固反対する。  

以上

 
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