お知らせ
出版労連・第141回定期大会特別決議 労使関係を破壊する外部からの不当な経営介入を許さない
出版労連・第141回定期大会特別決議
労使関係を破壊する外部からの不当な経営介入を許さない
2023年5月、マキノ出版が民事再生を断念し、破産手続きに入りました。マキノ出版グループ労組(以下、マキノ労組)は出版労連に加盟する単組の一つであり、全従業員の解雇にいたった破産までの経緯は痛ましいものでした。
2月にマキノ出版経営(以下、経営)が、事業再建と称し大幅な労働条件の切り下げとマキノ労組に対する解散要請を行ったことから、出版労連は同労組とともに対策会議体制を組み財務状況を分析し、労使協議を通じた事業再建を経営に呼びかけました。
しかし、団交を通じて浮かび上がってきたのは、従業員をコスト(人件費)としかみなさず、コストカットと称して不当労働行為すら行い、事業再建に本来不可欠な労使協議や情報共有を遮断するよう唆す悪質なコンサルタントの存在と、その言いなりで主体的な判断を放棄してしまった経営の姿でした。マキノ労組は事業再建のための課題がどこにあるのか経営に説明を求め、たとえ労働条件や業務内容に関して苦渋の決断を迫られることがあっても、労使協議を通じて経営が説明を尽くせば協力する用意があり、その姿勢で議論に臨んでいることを訴え続けました。それでも経営からの情報開示は進まず、マキノ労組が事業再建に協力する機会も与えられないまま 、経営は民事再生申立を強行し、最終的に民事再生を断念する結果となり、破産申立に至ってしまったのです。
「退職金制度は廃止する、組合は解散を決議してその資産を会社へ供与せよ」などと突如一方的に強要してきた経営に対し、マキノ労組は大混乱に陥りました。当初の混乱の中では「組合が解散すれば会社は存続できるのでは」と思い悩む組合員もいました。強引に組合解散を迫り、かつ組合の資産供与を強制する姿勢は社会常識としてありえないだけでなく、明白な不当労働行為です。さらには上部団体や弁護士に相談することを禁ずるかのようなコンサルタントの暴言もありました。マキノ労組はこれらの不当労働行為を記録し、出版労連の仲間や専門家と力を合わせ、従業員の声を集約して経営へ伝えることを通じて、正当な手続きを経ていない退職金制度の廃止を撤回させるなどの成果を勝ち取りました。その過程では、事業再建に協力するため情報開示を求めるマキノ労組と、開示に応じない経営との間で議論が停滞する場面もありましたが、経営が後に団交の場で認めたように、そこには労使対立の構図は存在しませんでした。にもかかわらず、コンサルタントは「破産の背景には労使対立があった」などとする記事を公開し、自らが出版社の事業再生の第一人者であることを積極的にアピールしています。
同社の一部発行物は他社へ譲渡され存続することとなりましたが、マキノ出版は破産し、その出版を担ってきた従業員は職を失いました。経営が悪質なコンサルタントの介入に依存せず、労使関係を尊重し事業再建への協力を求めていたら、経営とマキノ労組の双方が被った痛みはいくらか軽くなったのではないでしょうか。
出版業界は紙媒体の縮小という長期トレンドに加え、制作原価の高騰に苦しんでいます。経営状況の悪化が表面化する会社が今後、増加する懸念があります。事業再建のために、経営が社外のコンサルタントなどへ協力を求めることも予測しておく必要があります。しかし、自社の発行物を熟知し、取次や書店、読者と直接かかわり、より良い働き方を求めてとりくんでいる従業員を排除していては、出版文化と雇用を守る真の意味での事業再建は叶いません。私たち出版労連に加盟する労働者は、社外からの経営介入に不当労働行為の徴候がみられた場合には本部や地協、小共闘の仲間と情報共有して労使協議に臨み、一方的な労働条件・労働環境の改悪をさせないようとりくみます。
以上、決議します。
2023年7月14日
日本出版労働組合連合会
第141回定期大会