
教科書
2025年度実施教科書検定結果についての見解
2026年4月9日
2025年度実施教科書検定結果についての見解
日本出版労働組合連合会
教科書対策部長 川原 徹
PDF:2025kente_kenkai
去る3月24日に開かれた教科用図書検定調査審議会(検定審)で、2025年度に実施された、おもに高等学校中学年で2027年度から使用される教科書の検定結果が公表された。文部科学省によれば、検定受理点数は224点で、うち合格が220点、不合格が4点となった。不合格の内訳は歴史総合1点、日本史探究2点、世界史探究1点で、申請者はすべて令和書籍であった。
本見解は、文部科学省がウェブサイト上で公開した内容、および報道によって知りえた内容による。詳細については、後日発行する『教科書レポート』2026年版で詳述する予定である。
検定受理(申請)数は、前回2021年度の241点から17点の減少となっている。減少の大きな要因は、主に専門教科・科目で発行者が検定申請を行わず、現行版のままでの発行を継続することにしたためである。一般教科・科目でも同様の事例が起っている。これは生徒数減少による需要部数の減少、履修校の少なさに加え、義務教育用教科書同様、高校用教科書も定価があまりに安いことに起因していることを指摘したい。
- 報道の多くは「生成AI」に関する記述がはじめて現れたことに注目した。ある報道によれば、情報リテラシーに関しては国語、外国語、公民、情報の4教科で計32点、生成AIやAIに関しては8教科の計67点の教科書に記述があったとのことである。とはいえ、それらの多くは「生成AI」の活用に慎重を期すべきことを述べているという。著作権侵害のおそれや、調べ学習で「生成AI」を使うことの危険性など、要するに「生成AI」の現状に照らせば当然の記述であろう。一方、昨年9月25日に公表された、次期学習指導要領に向けた中央教育審議会の教育課程企画特別部会「論点整理」では、「生成AI」の活用が前面に出されている。この教科書記述と中教審(特別部会)の姿勢の乖離が、次期学習指導要領に基づく次の教科書(義務教育用を含めて)に、どのような影響を及ぼすかを見きわめる必要がある。
- 歴史認識や領土問題については検定意見がつかなかった。これは、この間の政治介入により「政府の統一的な見解」と異なると判断された記述には執拗に検定意見がつけられ、争点となってきた結果である。歴史学などの知見と必ずしも一致しない「政府の統一的な見解」が権力的に定着させられたというべきである。昨年の見解でも述べたように、これは「萎縮と自粛」を今回も教科書著者・編集者に強いたということでもあり、本質的には憲法21条の侵害である。
- 「論理国語」には今回も文学作品が掲載され合格となった。もともとこの科目は、「現代の国語」と同じく、文学作品は扱わないことになっていたが、2020年度検定の際に小説を掲載した「現代の国語」の教科書を合格させ、その社が大幅に採択を伸ばすという、検定基準の適用の不平等とそれがもたらした結果に教科書発行者から批判の声が上がったことが背景にある。検定制度の矛盾が表れているというべきである。
- 令和書籍の4点が「重大な欠陥」があるとして不合格となった。出版労連は出版の自由を断固守り「検閲」たる教科書検定にはそもそも反対の立場である。しかし検定の有無にかかわらず、歴史修正主義や皇国史観を教科書を通じて子どもたちに押しつけようとすることにも断固反対する。その立場から、これらの不合格教科書については、内容が判明しだい厳しく批判する方針である。一方、令和書籍は、中学校歴史教科書で何度も不合格を繰り返したが、それを一般書として販売してきた。これは「教科書」を利用して特定の思想を広げようとし、また金儲けに利用してきたということにほかならない。
- 前述のように、今回の検定の詳細については『教科書レポート』で分析することとする。
以上
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