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- 第41回出版技術講座開催記録です(全6講座)

第41回出版技術講座〖2024.06.03-2024.09.02〗開催記録
第41回出版技術講座の開催記録です。全6講座です。(出版技術講座運営委員会)
◆第1回 企画の立て方
◆開催日時:2024年6月3日(月)18:30~20:40
◎講師1 瓜生昭成さん
◎所属・略歴
株式会社小学館第四コミック局編集長
早稲田大学政治経済学部政治学科、早稲田大学大学院政治学研究科卒業
◎これまでのキャリア・現在の仕事内容
・週刊少年サンデーで、史上初となる嵐の表紙巻頭グラビア、AKB48の香りつき写真付録などを仕掛け、完売させる。
また、江崎グリコ「アイスの実」と電通とのアライアンスのもと、秋元康氏原案、『名探偵コナン』の青山剛昌氏
原作『AKB48殺人事件』をプロデュースし、地上波ゴールデンCMと連載漫画が同時に進行する、立体的なプロジェ
クトの総指揮を執る。
・東京ガールズコレクション(TGC)の漫画化、KADOKAWAのおもな独占市場だった『機動戦士ガンダム』のオリジナル
ストーリーは20巻を数え、吉本興業とのコラボレーションとして芸人の怖い話シリーズや、『GTO』の藤沢とおる氏
を講談社から迎えてのグルメ漫画など、ありそうでなかった人気企画を数多く立ち上げる。
・マンガアプリ「マンガワン」では、立ち上げ担当の『血と灰の女王』を看板作品として育て上げ、週刊連載8年目の
ロングセラーとなり、異世界転生の黎明期に企画した『悪役令嬢は夜告鳥をめざす』は、初速10万部を記録、局賞を
受賞する。
・編集長就任後は、フルカラー縦スクロール漫画と写真集レーベルを立ちあげ、さらにデジタルに親和性の高いZ世代を
テーマとした新ブランドを準備中。
◎講義要旨
企画は「①テーマ(骨)、②コンセプト(筋肉)、③モチーフ(皮膚)」の3原則から考える。読者が最初に触れる・見る
ものなので、③はとても大切。いままでなかった企画には、そもそもニーズがないことが多い。打率を上げるためには
ありそうでなかったこと、いままでなかった組み合わせを考える。良いタイトルには作品の世界観を伝える力がある。
◎講師2 當田マスミさん
◎所属・略歴
大日本図書株式会社書籍部出版課課長(編集長)
◎これまでのキャリア・現在の仕事内容
取次にて児童書配本などの業務を経験したのち、学参や児童書の出版社へ転職し、編集・広報・広告を担当。
大日本図書株式会社に転職後は、絵本の編集をメインとしている。
◎主な担当絵本
「ばけばけばけばけ ばけたくん」シリーズ(現在10冊)
「100ぴきかぞく」シリーズ(現在2冊)
「語りかけ絵本」シリーズ(現在6冊)
「おふくさん」シリーズ(現在5冊)
「にん・にん・じんのにんじんじゃ」シリーズ(現在3冊)
「おいしくなーれ」シリーズ(現在3冊)
『いろいろバス』
『どんなきもち?』
『ナージャの5つのがっこう』 など
◎講義要旨
編集者として大切にしている企画の立て方に関する具体的な視点を、担当絵本の紙面提示など、豊富な実例を交えて解説。
まずは社会を見る、絵本の編集でいえば子ども目線をもつことが重要。本は読まれて初めて価値ある商品となる。
ネタやアイデアをきちんと形にする計画を企画書にまとめることが大事。絵本制作における編集者としてのスタンスは
やや読者重視でスタートし、結果的に読者:著作者=5:5くらいになることが多い。
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◆第2回 本の制作
◆開催日時:2024年6月17日(月)18:30~20:40
◎講師 前田耕作さん
◎所属
出版社製作部
◎これまでのキャリア・現在の仕事内容
書籍を多く発行する出版社で製作部長を務めたのち、主に雑誌を発行する現所属に転職。
進行管理や入稿データ管理、印刷所・製本所とのやり取り、用紙の選定といった製作実務全般を
担当している。
◎講義要旨
手に取って読む構造物としての書籍を製作者の視点から詳細に解説。本の各部名称、種類、向き、大きさ、
材料(紙)、印刷、製本について、見本の提示も行いながら一通り解説したあと質疑応答を行った。
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◆第3回 著作権
◆開催日時:2024年7月1日(月)18:30~20:40
◎講師 浜野純夫さん
◎所属
著作権情報センター
◎講義要旨
著作権法の要点とともに、編集者が著作権を学ぶ意義について解説いただいた。
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◆第4回 装丁・デザイン
◆開催日時:2024年7月19日(金)18:30~20:40
◎講師 宮川和夫さん
◎所属
装丁家。宮川和夫事務所主宰。
◎これまでのキャリア・現在の仕事内容
1960年長野県戸隠生まれ。武蔵野美術大学基礎デザイン学科卒業。元・一般社団法人日本図書設計家協会会長。
2010~19年「実践装画塾」主宰。文星芸術大学・京都芸術大学非常勤講師。
◎講義要旨
「文章をカタチにする装丁、装画とは何だ。」と題して、①本とは何か、②装丁家の仕事とは、
③紙、印刷、加工について(特殊紙、エンボス、箔押しなど、実物の装丁作品を見ながら)、
④装丁とは……、⑤装丁家比較(菊池信義、水戸部功)、⑥装丁案事例と比較(採用・不採用の装丁の比較)、
⑦ワークショップ(歌詞からイメージされるものを言語化する)、⑧装丁を依頼するにあたって、
の項目立てで、基本から実践までをお話しいただいた。
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◆第5回 校正・校閲の基礎知識
◆開催日時:2024年8月21日(水)18:30~20:40
◎講師 日野玄太さん
◎所属
新潮社校閲部
◎講義要旨
つぎの事項について講義していただいた。(講義レジュメより小見出しを抜粋)
○校正と校閲の違い、○なぜ校正/校閲が必要か、○入稿から発売までの流れ(単行本の場合の一例)、○入稿前の注意、
○原稿確認(著者作成データ、または雑誌掲載時のデータを流用の場合)、○原稿合せ(手書き原稿とOCRによるデータ入稿の場合)、
○赤字の入れ方、○事実確認について、○ルビについて、○疑問の出し方、○差別語について、○表記の統一、○参考図書、○初校戻し、
○赤字合せ、○ミスが生まれる状況、○デジタル・AI時代の校正/校閲
事前に校正・校閲の課題を受講生に課してあり、その課題の解説もしていただいた。
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◆第6回 本の売り方・情報発信
◆開催日時:2024年9月2日(月)18:30~20:40
◎講師 清田康晃さん(平凡社)・ 長谷川好正さん(NHK出版)
◎所属
清田康晃さん:平凡社 営業部
長谷川好正さん:NHK出版 マーケティング局 セールス・プロモーション部
◎これまでのキャリア・現在の仕事内容
清田康晃さん
教科書会社を経て、2011年平凡社入社。以来営業部配属。
担当ジャンル:平凡社新書、平凡社ライブラリー、一般書、東洋文庫、カレンダー・・・
担当会活動:人文会、四六判宣言、楽しい学校図書館の会・・・
法人担当、直取引部門も管轄。
SNSでは平凡社ライブラリーのXアカウントを担当
長谷川好正さん
新卒で取次会社に入社。その後、総合出版社へ入社し出版営業に携わる。
NHK出版入社後、書籍営業、雑誌営業を経て、現在は書店営業を担当。
◎講義要旨
①自社の刊行物(新刊)を出版流通というインフラにいかに載せるか。
②初刷部数の決め方。部数と定価の設計に必要なこと。
③SNSを利用した販促の成功例。『シャーロック・ホームズの護身術 バリツ―英国紳士がたしなむ幻の武術』(平凡社、2024年)を例に。
④書店の雑誌売場確保の重要性。
⑤販促に力をかけるポイント→〇月号を売る。書店、販売会社への説明会。店頭拡材、各種コンクール企画、読者プレゼント、
LP(ランディングページの作成)など。
⑥雑誌の未来と可能性。成功事例を紹介。
⑦対談 顧客が書店以外から情報を認知するポイントが増えた。
昔は出版営業=物流で良かったが、今は物流+情報流通が重要になる。
自社の新刊をどこに届けるかまで意識することが大切。