
声明・談話など
【談話】 政府は日本学術会議法「改正」法案を廃案とし、学術会議の独立性を守れ
2025年5月28日
【談話】政府は日本学術会議法「改正」法案を廃案とし、学術会議の独立性を守れ
日本出版労働組合連合会
書記長 樋口 聡
日本出版労働組合連合会(出版労連)は、5月13日、衆議院で可決され参議院での審議がはじまる日本学術会議(学術会議)の特殊法人化法案に断固反対します。
そもそも学術会議は、1949年、第二次世界大戦での反省をふまえ、科学が文化国家の基礎であるという確信のもと、行政、産業および国民生活に科学を反映、浸透させることを目的として、政府から独立して職務を行う「特別の機関」として設立されました。この職務の独立性は、憲法23条の学問の自由に由来します。そして、職務の遂行を財政面で保障するために、経費の国庫負担が定められています。職務の独立性と経費の国庫負担は、学術会議が文化国家の発展に寄与するための両輪であり、いずれも欠くことはできません。
しかし、今回の法案では、学術会議法前文が定める「科学者の総意の下に」設立したとの原点を消し去るとともに、「科学者の代表機関」(第2条)として「独立して職務を行う」(第3条)という学術会議の根幹を変質させ、会員選考、活動計画の策定、予算の作成、組織の管理・運営、実績の評価や監査など、政府をはじめ外部の介入を許すしくみが幾重にも設けられています。また、財政措置は補助にとどまるとされ、学術会議自らが国や産業界などから資金を集めなければならず、その結果、学術会議の発する助言が政府の意向や産業界の利益に沿ったものにならざるをえなくなります。今回の法案のようなしくみは、海外の民主主義国のどの学術機関にも見られません。それは歴代会長6氏が、「国内外において、日本学術会議のアカデミーとしての地位の失墜および日本政府の見識への失望を招く」(2月18日声明)、「独立して政府などに科学的助言を行う日本学術会議の使命に適合せず、政府による科学の独立性の軽視と科学の手段化を深く憂慮させるもので認められない」(5月20日声明)と厳しく批判しているとおりです。
加えて、学術会議のあり方を変えなければならないような立法事実は存在しません。それどころか今回の法案の発端は、2020年の菅義偉首相(当時)による学術会議会員候補6人の任命拒否にあります。「任命は形式的行為」との法解釈を踏みにじって学術会議の人事に介入した違憲、違法の暴挙です。政府は任命拒否を「学術会議のあり方」にすり替え、学術会議の度重なる懸念の表明を無視して「法人化ありき」で強引にすすめています。任命拒否は現在も撤回されておらず、学術会議は「違法状態」に置かれたままです。政府はまず、任命拒否を撤回すべきです。
以上のように、学術会議への政府の介入が許されるならば、結果として研究者全体の発言や研究テーマの選択に萎縮をもたらし学問の自由が侵害されるとともに、豊かな文化国家としての発展も妨げられます。出版産業は、科学者・研究者の自由な研究活動なくしては成り立ちません。科学者・研究者は、新たな学問的、文化的な価値、最新の科学的知見を読者に提供し、社会に議論を提起、醸成していくための大切なパートナーです。私たちの仕事を守り、発展させていくためにも、今回の法案の成立を許すことはできません。
出版労連は、学術会議のあり方を根本から変質させる今回の法案を撤回すること、また参議院での徹底審議によって廃案とすることを強く求めます。