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首相官邸の質問制限・妨害行為(記者に対するハラスメント)に抗議する(日本マスコミ文化情報労組会議 MIC )
首相官邸の質問制限・妨害行為(記者に対するハラスメント)に抗議する PDF版 2019_02_18-MICseimei2019年2月18日 日本マスコミ文化情報労組会議(MIC) (新聞労連、民放労連、出版労連、全印総連、映演労連、映演共闘、広告労協、音楽ユニオン、電算労)
安倍内閣は2月15日、菅義偉官房長官の記者会見における東京新聞の「特定の記者」の質問について、「誤った事実認識に基づくものと考えられる質問」と一方的に断定し、「国内外の幅広い層の方々の事実認識を誤らせることにもなりかねず、ひいては、定例会見を行う意義が損なわれるおそれがあるとの問題意識を有している」とする政府答弁書を閣議決定しました。 記者会見は、記者が国民・市民を代表して様々な角度から質問をぶつけ、為政者の見解を問いただすことによって、国民・市民の「知る権利」を保障する場です。それにもかかわらず、記者の質問内容にまで政府見解の枠をはめようとする今回の閣議決定は、「取材の自由」や全ての国民・市民の「知る権利」の侵害であり、断じて容認することはできません。首相官邸および閣議決定に署名した各閣僚に対し、厳重に抗議し、撤回を求めます。 首相官邸は、沖縄県名護市辺野古での米軍新基地建設をめぐり、「埋め立て現場ではいま、赤土が広がっております」と東京新聞記者が質問したことについて、「表現は適切ではない」「事実に反する」と主張し、その質問を「事実誤認」「問題行為」と断じています。しかし、赤土が広がっていることは現場の状況を見れば明白であり、記者が記者会見で質問することは自然な行為です。問題発覚後に沖縄県が求めている土砂に関する立ち入り調査に沖縄防衛局などが応じていないことも事実です。首相官邸の主張は、問題発覚前に行われた調査とすり替えて、意に沿わない記者に「事実誤認」のレッテルを貼る卑劣な行為です。 また、首相官邸は、「事実誤認」を理由に「9回の申し入れを行った」(菅官房長官)と国会などで答弁し、「度重なる問題行為」を印象づけようとしています。しかし、たとえば国連特別報告者が求めた閣僚との面会が見送られたことについて、東京新聞記者が「ドタキャン」と表現したことは、国際社会の評価に沿ったものです。こうした質問を「事実誤認」としておとしめる行為は、日本政府の国際的信用を失墜させる恐れすらあります。 記者会見で指名権を持つ菅官房長官は約1年半にわたって、この東京新聞記者の質問を後回しにし、司会役の官邸報道室長は「公務」を理由にこの記者の質問数を1~2問ほどに制約していました。さらには、質問中にもかかわらず、報道室長が数秒おきに「簡潔にお願いします」と妨害し、「質問が長い」と印象づけようとしています。一方的に「事実誤認」のレッテルを貼ることを含めた一連の首相官邸の行為は、権力者による記者に対するハラスメント(いじめ、嫌がらせ)行為です。 首相官邸は昨年12月28日、この東京新聞記者の質問が「事実誤認」「度重なる問題行為」であるとして、「このような問題意識の共有をお願い申し上げる」とする申し入れを内閣記者会に行いました。新聞労連などがこの申し入れを撤回するよう求めています。事実をねじ曲げ、意に沿わない記者にハラスメント(いじめ、嫌がらせ)を繰り返し、排除しようとする首相官邸の対応が、悪しき前例として日本各地に広まることを危惧しているからです。ところが、政府は2月15日の閣議決定で、一連の質問制限・妨害を正当化し、今後も「ある」と宣言してきました。 日本では第2次世界大戦中、政府が新聞事業令を施行するなど、報道機関や記者の統制を計画し、準統制団体である日本新聞会を設置させるなど、自由な報道や取材活動を大きく制限しました。この結果、報道はいわゆる「大本営発表」に染まり、取り返しのつかない数の死傷者を出しました。二度と同じ過ちを繰り返してはなりません。 マスコミ・文化・情報の職場で働く私たちは、言論・表現・報道の自由を守るため、首相官邸に対して、不公正な記者会見のあり方をただちに改め、記者に対するハラスメント(いじめ、嫌がらせ)をやめるよう、強く求めます。(以上)