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【教科書対策部声明】学問の自由を根底から危うくする日本学術会議法可決・成立に強く抗議する

【教科書対策部声明】学問の自由を根底から危うくする日本学術会議法可決・成立に強く抗議する

2025年6月12日
日本出版労働組合連合会(出版労連)教科書対策部
部長 川原 徹


 11日に参議院で可決・成立した日本学術会議法(以下「本法」)に、われわれ出版労連教科書対策部は、怒りを込めて強く抗議し、その廃止を要求する。
 本法の最大の問題は、憲法が保障する学問の自由を侵害しかねないことである。旧日本学術会議法のもとですら、菅内閣による6人の会員任命拒否が起こり、説明責任が果たされていないままである。日本学術会議の人事に時の政権が介入することを可能とする本法のもとでは、それが適法とされかねない。坂井学内閣府特命担当相が「特定のイデオロギーや党派的主張を繰り返す会員は、今度の法案で解任できる」と述べたことは、それが単なる杞憂でないことを示している(5月9日、衆院内閣委員会)。
 日本学術会議は、教科書検定のあり方について、是正の提言を行ってきた(史学委員会、歴史認識・歴史教育分科会)。これは政府から独立した機関だからこそ可能だったことである。検定に対する出版労連教科書対策部の根本的な方針は「教科書検定の廃止」であるが、その途上の改革案として、教科書検定からの権力性の排除を掲げてきた。具体的には、文部科学省が任用する教科書調査官制度の廃止と合議制への移行、合議にあたる委員には日本学術会議の推薦を要件とすることである。これは日本学術会議が政府から独立した機関であることを前提としており、本法は出版労連教科書対策部の方針とは全く相容れない。
 本法の最大のねらいは、日本学術会議に軍事的研究を行わせることを可能にすることにある。教科書は、戦前に国家主義・軍国主義イデオロギー推進の強力な武器であった。その反省に基づき、戦後の教科書労働者は、教科書がそのような教育に利用されることを拒否してきた。「学問の自由」は、「出版の自由」と相まって、日本国憲法の根本的な価値であって、その点で、軍事的研究を拒否してきた日本学術会議の姿勢と共鳴する。これは「特定のイデオロギーや党派的主張」などというものではありえない。
 折しも今年2025年は、故・家永三郎氏が教科書検定の不当性を訴えて裁判を起こしてから60年にあたる。この訴訟の最大の争点は「学問の自由」であった。私たちは、この訴訟に連帯し、最後までともにたたかった。そのような伝統を持つ者として、本法は断じて許すことができない。本法の可決・成立に強く抗議するとともに、廃止することを重ねて強く要求する。

以上
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