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藤井寺市での教科書採択をめぐる贈収賄問題について【見解】

2023年4月26日

藤井寺市での教科書採択をめぐる贈収賄問題について【見解】

   

日本出版労働組合連合会(出版労連) 教科書対策部長 小森浩二

PDF版:230426_kenkai 2021年度、大阪府藤井寺市での中学校教科書採択に関連して大日本図書株式会社(以下「大日本図書」)および同市内の中学校校長(当時。以下「元校長」)による贈収賄事件が引き起こされ、2023年に贈賄側・収賄側の両者に対し、有罪判決が確定した。出版労連教科書対策部は、これを教科書発行にかかわる者を含む産業別単一労働組合(単産)として看過できない問題と認識し、議論をすすめてきた。それをふまえ、以下に見解を表明する。 (問題の概略) (本件についての見解) (*)教科書発行者が「採択関係者」を接待し、そうした場で「白表紙本」を見せて意見を聞き、それに対価を支払っていた問題。これを受けて教科書発行者でつくる教科書協会は「教科書発行者行動規範」を策定し、文部科学省の承認を得たうえで各発行者に順守を求めている。 第一に、児童・生徒数の減少=教科書需要数の減少という状況の中で、4年に1度しか採択の機会がなく、しかも広域(共同)採択制度のため、採択結果は「オール・オア・ナッシング」となることである。このため、一度の採択の成否が各教科書発行者の経営状況を大きく左右することにならざるをえず、これが営業活動の過熱の要因となっている。 第二に、教科書採択のプロセスにおいて、現場教員の意見が尊重されていないことである。教科書の調査研究にあたる調査研究委員会(藤井寺市では「教科書選定委員会」)の検討結果を、「教育委員の権限と責任において」行われるとして、教育委員が必ずしも尊重しなくてもよいとする制度に贈収賄が入り込む余地があるといえる。藤井寺市の教育委員会議事録(2020年7月30日臨時教育委員会)でも、学校現場の意見は全く報告されていない。 ただし、こうした制度的要因があるからといって、贈賄が正当化されるわけではないことはいうまでもない。   (再発防止のための提言)   大日本図書は、次期中学校教科書の検定不合格という処分を受けて、現行教科書を継続発行し、これを来年度の教科書採択に供する方針を打ち出した。これにより、採択する教科書がないという事態は避けられたものの、今年の小学校教科書採択を含め、経営状況への否定的な影響は避けがたいだろう。そうした問題はあっても、同社には労働者の雇用を守り、労働条件の不利益変更は避けることを求める。  

以上

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