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  • 第49回出版研究集会開催

    第49回出版研究集会開催

    出版産業のこんにち的到達と課題を解き明かそうという出版研究集会の49回目を、
    2023年2月10日~3月1日にかけてオンライン併用で開催します。
    全体会と5つの分科会で構成。参加費1,000円で、すべての回に参加できます。
    出版労連組合員以外の方の参加も大歓迎。ふるってご参加ください
    —————————-
    第49回 出版研究集会
    ★詳細はチラシをご覧ください★
    【PDF】第49回出版研究集会

    開催期間:2023年2月10日(金)~3月1日(水)
    参加費 :1,000円(全体会+すべての分科会に参加できます)
    会場:出版労連会議室+Zoom、もしくは文京シビックセンター+Zoom
    申し込み方法:以下ABのいずれでも可
    A Peatixで通し券を購入
    https://49syukken.peatix.com/
    B メールでのお申し込み
    件名を「49出研集会申し込み」とし、以下を本文に記入して、
    sakai@syuppan.net
    にお送りください。
    1. 氏名/2. 単組名(出版労連組合員以外の方は会社名などを任意で)/3. メール
    アドレス/4. 会場参加したい全体会・分科会

    ◎全体会
    いま、本を読むこと・つくること――パンデミックと戦争のさなか
    小川公代さん(英文学者、上智大学)
    白石正明さん(編集者、医学書院)
    2月28日(火)18:30~20:30
    文京シビックセンター26F スカイホール(オンライン併用)
    ◎分科会1
    個人情報の利活用だ! さあ、あなたの個人情報をマイナポイントと交換しよう! で
    も、それってほんとうに大丈夫?
    「共通番号いらないネット」から2名
    2月10日(金)18:30~20:00
    出版労連会議室(オンライン併用)
    ◎分科会2
    デジタル社会のデモクラシーを求めて――ビッグ・テックとの闘い
    内田聖子さん(NPO法人アジア太平洋資料センター[PARC]共同代表)
    2月15日(水)18:30~20:00
    出版労連会議室(オンライン併用)
    ◎分科会3
    「いいね」で名誉棄損? SNS時代の表現の自由講座
    志田陽子さん(憲法学者、武蔵野美術大学)
    2月20日(月)18:30~20:00
    出版労連会議室(オンライン併用)
    ◎分科会4
    文科省による「拉致問題関連本の充実」要請問題を通して図書館の自由を考える
    松井正英さん(日本図書館協会・図書館の自由委員会委員/長野県諏訪清陵高等学
    校・附属中学校学校司書)
    2月24日(金)18:30~20:00
    文京シビックセンター4階会議室B(オンライン併用)
    ◎分科会5
    教育DXは何をもたらすか
    児美川孝一郎さん(教育学研究者、法政大学)
    3月1日(水)18:30~20:00
    出版労連会議室(オンライン併用)

    お問い合わせ:出版労連・坂井
    電話:03-3816-2911
    メール:sakai@syuppan.net

  • 出版ネッツ「常駐フリーアンケート調査」の実施について

    出版ネッツ「常駐フリーアンケート調査」の実施について

    出版労連・ユニオン出版ネットワーク(出版ネッツ)による「常駐フリーアンケート調査」を実施しています。出版社等に出向いて働くフリーランス(常駐フリー)の方はご記入ください。

     

    出版労連・出版ネッツ:常駐フリーアンケート調査【外部リンク】

    アンケート回答期間:2022年12月16日~2023年2月10日 220日まで

     

    名称:「常駐フリーアンケート調査」
    対象者:出版社等に出向いて働くフリーランス(常駐フリー)

    〈常駐フリーの定義(仮)〉
    業務委託契約や請負契約を結んで働いている人で、以下の①~③のすべてに当てはまる人のことです。

    • ①指定された場所で仕事をしていること(基本は出版社等に出向いて社員の指示のもとで働いている人を指すが、コロナ禍により在宅勤務を許されている場合は指定された場所を自宅と考えてよい)
    • ②1社について、1週間20時間以上、または月80時間以上就業していること
    • ③1カ月以上の業務継続が見込まれること

    ※契約社員(雇用)と常駐フリーの見分け方:常駐フリーは労働保険(雇用保険と労災保険)に加入していない。源泉徴収されていても、発行されるのは源泉徴収票ではなく支払調書である。

     

    調査目的
    フリーランスの働き方は多様だが、出版業界には「常駐フリー」と呼ばれる、雇用労働者とあまり変わらない働き方をしている人たちがいる。2022年9月、出版ネッツは「常駐フリーアンケート調査&聞き取り調査」を行い、報告書を公表した。サンプル数は少ないが、そこから常駐フリーのさまざまな実態、ニーズ、課題が見えてきた。
    常駐フリーの権利・条件の向上や課題解決のためには、まずは常駐フリーの実態を「見える化」する必要がある。そのためのアンケート調査である。常駐フリーの組織化も視野に入れて取り組みたい。

    ・集計結果公表:2023年3月末~4月中旬(予定)※出版ネッツ、出版労連の公式サイトにて公表

    ・問い合わせ先:出版ネッツ総合窓口(常駐フリー) 出版労連

  • 大日本図書株式会社による教育長等の接待について(見解)

    大日本図書株式会社による教育長等の接待について(見解)

     

    2022.10.24
    日本出版労働組合連合会(出版労連)
    教科書対策部長
    小森浩二

    PDF:20221024kenkai

     

    大日本図書株式会社(以下大日本図書)が、教育長らに接待を行っていたことが明らかになった。出版労連教科書対策部は、この問題は以下に述べる観点から軽視できないものであると認識し、ここに見解を表明する。

     

    (経過の概要)
    2022年9月30日および10月7日の各メディアの報道によれば、次のような経過であった。
    1. 2022年7月1日に、大日本図書営業担当幹部らが、茨城県五霞町(採択地区としては茨城第11地区)の教育長およびその知人の元中学校長と会食し、その代金1人当たり約9,500円を同社が支払い、1,600円の菓子を渡していた。
    2. 接待された2名は教育長とその知人の元校長であった。
    3. 接待の席上、教科書採択の話は出なかった。
    4. 接待を受けた2名は、後日その費用を大日本図書の銀行口座に振り込んだ。
    5. 当該教育長は、10月3日に辞職願を町長に提出し、7日付で退職した。

     

    (見解)
    1. 大日本図書及び同社が加盟する一般社団法人教科書協会が、9月30日にそれぞれ公表した「お詫び」「令和4年9月30日付の読売新聞報道について」でも述べているように、自ら合意した自主ルール「教科書発行者行動規範」に違反するものである。
    2. 教科書採択は、その内容の如何によるべきであって、接待などで左右されてはならない。それにもかかわらず、同様の問題は前出の自主ルール策定後も複数の教科書発行者により、何度か起こっている。こうした問題が、教科書採択制度の構造に根差していることを指摘しなければならない。
    3. 教科書無償措置法に基づく義務教育教科書の採択が1964年に施行されて以後、教科書業界では与党や政府高官への献金をはじめ、最近も2016年の「白表紙問題」、教育課題アドバイザー制度といった問題が繰り返され、出版労連とその傘下の教科書労働組合共闘会議(教科書共闘)は、これらの問題を強く批判し、その清算を要求してたたかってきた。今回の問題は、その体質がいまだに払拭されていないことを示すものである。これを機に、教科書業界の体質を根本的に改めるべきである。各発行者に対し、そのための努力を要求するものである。
    4. 今回のような問題の再発防止のためには、教科書発行者の自覚が必要であることは当然だが、それに加えて、少なくとも次のような教科書制度の改革が必要である。各発行者の自覚に委ねるだけでは、いずれ再発する可能性は高いと言わなければならない。
    (1) 義務教育教科書で行われている現行広域採択制度(共同採択制度)を改め、高等学校同様、学校ごと採択にすること。高等学校では実施しているにもかかわらず、義務教育では不可能であるとの文部科学省の主張は成り立たない。この制度は、4年ごとに「オール・オア・ナッシング」「ウィナー・テイク・オール」という結果をもたらすきわめて不合理な制度である。
    (2) 教科書価格を大幅に引き上げて適正化すること。この問題の根本には、児童生徒数の減少と価格の抑制による教科書業界への先行きに対する経営の不安と懸念がある。文部科学省の来年度の概算要求でも、引き上げ率は1.4%にすぎない。文部科学省は物価高騰、特に用紙代の高騰を考慮したとするが、全く不十分である。その意味では今回の問題を引き起こした根源は国家政策にあると言わなければならない。

    5. 今回の問題を利用して教科書発行者の正当な営業活動を萎縮させるような動きがあれば、断固反対する。

     

    以上

     

  • 第139回定期大会大会宣言

    第139回定期大会大会宣言

    大会宣言

     

     私たちは、この第139回定期大会で「賃金・労働条件を向上させ、働きやすい職場をつくろう/ハラスメント根絶、ジェンダー平等、フリーランスの権利向上を/平和と民主主義、言論・出版・表現の自由を守ろう」をスローガンとして掲げるなか、2023年度の運動方針案について討議してきました。
     「戦争が廊下の奥に立つてゐた」かつて中学校の国語教科書に掲載されていた渡辺白泉の俳句です。戦争に関するニュースが毎日、大きく報道されるなか、先の参議院選挙では「改憲4党」と呼ばれる勢力が、改憲発議に必要な3分の2を確保しました。私たちは日中戦争のころにつくられた、治安維持法違反の嫌疑で投獄されたという渡辺白泉の句から、出版労連にとって平和に対するとりくみとは何か、今、あらためて考えることが大切ではないかと考えます。
     映画「教育と愛国」で描かれたように教科書に対する権力の介入が今、大きな問題になっています。私たちは2023年度も引き続き、言論・出版・表現の自由を守る活動にとりくんでいきましょう。また、先の参院選では、街頭演説中の安倍元首相が銃で撃たれ死亡するという事件が起きました。私たちはあらゆる暴力に抗していきましょう。
     コロナ禍の影響は未だ大きいのですが、出版業界は雑誌の売上減、書店の減少などの課題がある一方、紙の書籍の売上が15年振りの増加となり、コミックスを中心に電子での売上が好調で、中小を含めた出版業界全体とはいかないまでも、一筋の光が見え始めています。2023年度も引き続きオンラインも利用した対話もとり入れて、賃上げ、労働条件の改善に積極的にとりくみましょう。
     取材活動中に長崎市の部長から性暴力を受けたとして市に損害賠償を求めた裁判で、長崎地裁は記者の訴えを認め、約1,975万円の支払いを市に命じました。出版労連でも、ハラスメントの被害者にも加害者にもならないために、引き続きジェンダー平等に対するとりくみをすすめていきましょう。
     本日の定期大会では、9名の代議員、2名の特別代議員から発言がありました。また、事前発言として3名の特別代議員から文書発言がありました。例えば、次のような内容です。

    ●賃金とは何かを考えたい。在宅勤務を検討。事実婚の場合の社会保障に配慮を。リストラ後の組合活動、若い人が参加できる組合活動を。大手の出版社の組合、管理職にも声掛けを。
    出版労連の加盟組合数、組合員数の減少。大きな課題がある。具体的なとりくみを。
    ●争議支援では、フリーライターAさんの裁判の画期的な判決、美々卯スラップ訴訟の納得できる和解があった。一方、二玄社では新たに解雇争議が発生した。桐原争議も、会社側が和解を拒み継続中、争議の全面解決を目指す。
    ●教科書価格については、デジタル教科書のことも検討してほしい。紙の教科書の価格は販売管理費も考えてほしい。従軍慰安婦など教科書をめぐる状況。教科書会社の淘汰。
    ●取次現場の管理強化、賃金・コストカット、労働環境の問題。宣伝活動への支援を。出版業界のパワハラ・セクハラの問題へのとりくみを。フリーランスの労災の問題の検討を。
    ●20周年を迎えた出版ユニオンでは、労働相談に対応、イベントとの開催など活発な活動を行った。

     課題は多岐にわたり、すべてを容易に解決できるものではありませんが、本日の討議の中で問題を共有し、ともに努力し合うことを確認しました。
     出版業界は今、大きな転換期を迎えています。また、戦争や長引くコロナ禍は私たちの生活に、物価高など大きな影響を及ぼしています。さらにハラスメントやテレワーク、長時間労働、非正規やフリーランスの賃金・報酬の問題など、労働環境の面でも解決すべき多くの課題があります。そのようななか、労働組合は世代交代やリアルな会議が行えないなどの課題を抱えつつも、日々の生活や仕事とも両立させながら、知恵を出し合い、力を合わせて真摯に活動にとりくんでいます。その努力は必ずや実を結び、大きな花を咲かせることでしょう。
     今、「時代が労働組合を欲している」という見方もできます。私たちは出版に携わる者の労働組合として、未来に向けてもっと議論を深め、広く発信し、より多くの人とつながって、平和で豊かな社会をつくっていかなければなりません。夢を追い求めることをあきらめることなく、ともに一歩ずつ前にすすんでいきましょう。

    以上、宣言します。

     

    2022年7月15日連合会 第139回定期大会
    日本出版労働組合
    PDF:220715大会宣言

  • 第139回定期大会特別決議(言論・出版・表現の自由と平和を守ろう)

    第139回定期大会特別決議(言論・出版・表現の自由と平和を守ろう)

    出版労連・第139回定期大会特別決議

    言論・出版・表現の自由と平和を守ろう

     

     2022年2月24日、ロシアが隣国のウクライナに軍事侵攻しました。ロシアのプーチン大統領は、国際社会からの非難を浴びても攻撃の正統性を主張し、あろうことか核兵器の使用も辞さない姿勢を見せました。ウクライナの抵抗は続き、未だ戦争終結の糸口さえ見いだせていません。ロシアのウクライナ侵略に対抗して各国で武器の提供をし合うことが、ますます世界的な規模で広がっています。
     「平和のためには軍事力を高める必要がある」それは本当に平和のためでしょうか。
     国連憲章は、国連の目的を「国際の平和及び安全を維持すること」とし、「すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない」との原則を示しています。
     第二次世界大戦では、日本軍によりアジア市民が多数犠牲になりました。そして、最後はアメリカによる広島、長崎への原爆投下で戦争の終結を迎えたのです。
     戦争を起こさないためにはどうしたらよいのでしょうか。
     私たちは「武力に頼ることなく、対話で平和を守る」という声をあげていくことを続けていく必要があるのではないでしょうか。
     そして、このような戦時下では言論への制限も強まっています。ロシアでは情報が規制され、海外メディアは閉め出され、都合の悪い情報は国民には知らされないように政府によりコントロールされています。香港やミャンマーなど、世界各国で言論の自由と知る権利は危うい状況にあると言えます。
     日本でも第二次世界大戦で国による言論統制が行われました。国民には国の都合のよいことしか知らされず、戦争に反対を唱えた人々は逮捕されていきました。
     そして現代の日本は平穏に見えるようで、どこか息苦しさが感じられます。
     近年では「表現の不自由展」の開催への妨害、言論に対する恫喝目的で提訴し高額賠償を求めるスラップ訴訟も起きています。
     このような時に憲法改正をすすめる動きが強まっています。自民党の改憲草案では、言論・出版・表現の自由を保障する日本国憲法21条に第2項を加え、「公益及び公の秩序を害することを目的とする」活動は認めないとしています。
     私たちは言論・出版・表現の自由を守るために改憲に反対します。そして憲法で保障されている私たちの権利をよりどころとして平和を守るとりくみを続けていきます。

    以上、決議します。

     

    2022年7月15日
    日本出版労働組合連合会
    第139回定期大会
    PDF:220715特別決議「言論・出版・表現の自由と平和」

  • Aさん(業務委託契約報酬・ハラスメント慰謝料請求)事件 東京地方裁判所判決にあたっての声明

    Aさん(業務委託契約報酬・ハラスメント慰謝料請求)事件 東京地方裁判所判決にあたっての声明

    Aさん(業務委託契約報酬・ハラスメント慰謝料請求)事件

    東京地方裁判所判決にあたっての声明



    PDF:200525【声明】Aさん 業務委託契約報酬・ハラスメント慰謝料請求事件

     

    1 フリーライターの女性が、エステティックサロンを経営する会社に対して、業務委託契約の報酬と、セクシュアルハラスメント及びパワーハラスメントによる慰謝料の支払を求めた事件(令和2年(ワ)第17431号)の裁判において、2022(令和4)年5月25日、東京地方裁判所民事第25部(裁判長平城恭子、裁判官熊谷浩明、裁判官織田みのり)は、原告らに対して、一部認容判決を言い渡した。

     

    2 判決は、業務委託契約報酬請求について、契約の成立を認め、原告の請求を全額認容した。
    そして、原告が請求している複数のセクシュアルハラスメント及びパワーハラスメント行為について、そのほとんどの事実を認定し、慰謝料150万円を認容した。
    ハラスメント事件が一般的にそうであるように、本件も、ハラスメント行為についての客観的証拠に乏しい事案である。それでも、判決は、「美容ライターとして安定した収入を得ることを嘱望する原告が、被告会社から業務の依頼を打ち切られ、報酬の支払を受けられなくなることを恐れて、被告代表者に対してセクハラ行為等による被害を訴えず、被告代表者との間でセクハラ行為等の存在をうかがわせる内容のメッセージのやり取りをしなかった可能性も十分あり得る」として、原告の供述の信用性を肯定し、原告の主張するほとんどの事実を認定した。
    また、本件契約は雇用契約でなく業務委託契約であるが、「原告が、当時、美容ライターとして固定額の月収を得られる仕事に就いたことがなく、被告代表者から、基本給を月15万円として業務委託契約を締結し、仕事の内容や結果をみて報酬を増額することや役員ないし正社員としての採用する可能性を示唆される一方で、結果が出なければすぐに契約を終了させる旨を告げられた上で、被告代表者の指示を仰ぎながら業務を履行しており、原告が被告代表者に従属し、被告代表者が原告に優越する関係にあったものというべきである」として、被告代表者が原告に対して、ハラスメント行為の優越的地位にあることを認定した。
    そのうえで、「約7か月間にわたって、原告にバストを見せるよう求め、被告代表者の性器を触ることを要求するなどの性的な発言のみならず、原告の陰部を触り、原告の臀部に被告代表者の股間を押し付けるなどの性器への身体接触を伴うセクハラ行為を継続して行うとともに、原告に対する報酬の支払を正当な理由なく拒むという嫌がらせにより経済的な不利益を課すパワハラ行為を行ったものであり、その態様は極めて悪質である。」と断じた上、その後に原告に生じたうつ状態等の身体不調をこれらのハラスメント行為によるものと認定し、慰謝料150万円を認容した。
    また、被告代表者の不法行為責任のみならず、「実質的には、被告会社の指揮監督の下で被告会社に労務を提供する立場であったものと認められるから、被告会社は、原告に対し、原告がその生命、身体等の安全を確保しつつ労務を提供することができるよう必要な配慮をすべき信義則上の義務を負っていた」として、被告会社の安全配慮義務違反を認めた。

     

    3 フリーランスは、発注者と労働契約を締結しておらず、不安定な立場に置かれている。労働施策推進法や男女雇用機会均等法におけるパワーハラスメントやセクシュアルハラスメントの防止措置義務においても、フリーランスは対象外である。指針において、フリーランスに対しても対策を講ずるのが「望ましい」とされているにとどまる。
    このようなフリーランスに対する対策の遅れから、発注者は報酬の支払いを免れようとフリーランス(受注者)にパワーハラスメントを行う、さらには優越的立場を利用した発注者が、業務を請け負いたい・継続したいと考えるフリーランスの心理に付け込んでセクシュアルハラスメントを行うといったことが横行している。本件は、その典型的な事案である。
    本判決は、そのようなフリーランスが置かれている現状をくみ取り、フリーランスに対するセクシュアルハラスメント及びパワーハラスメントの慰謝料請求を認容した画期的な判決である。また、被告に対する不法行為責任だけでなく、被告会社の債務不履行(安全配慮義務違反)責任を認めた点も画期的である。
    ただし、判決が認定した事実に照らして、慰謝料額が150万円というのは低額であり、この点については遺憾である。
    私たちは、被告に対し、本判決を重く受け止め真摯に履行することを求める。同時に、すべての発注者に対し、発注者にはフリーランスへの安全配慮義務があることを認識し、ハラスメント防止対策などフリーランスが安全で快適に働ける就業環境の整備を行うことを求める。また、国に対しても、速やかにハラスメント防止関連法をフリーランスに適用することを求めるものである。

     

    2022(令和4)年5月25日

    日本出版労働組合連合会(出版労連)

    ユニオン出版ネットワーク(出版ネッツ)

    すべてのハラスメントにNO!フリーライターAさんの裁判を支援する会

    (Aさんを支援する会)

    Aさん(業務委託契約報酬・ハラスメント慰謝料請求)事件弁護団

     

    フリーランスへの会社の安全配慮義務を認める判決 東京地裁|NHK 首都圏のニュース
    https://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20220525/1000080258.html
    フリーライターへのセクハラ認定、会社は安全配慮義務違反 東京地裁:朝日新聞デジタル
    https://www.asahi.com/articles/ASQ5T53H0Q5SULZU00P.html
    女性フリーライターへのセクハラとパワハラを認定 東京地裁 契約した会社と経営者に賠償命令:東京新聞 TOKYO Web
    https://www.tokyo-np.co.jp/amp/article/179516
    女性フリーライターへの「セクハラ」認定、会社と経営者に188万円賠償命じる 東京地裁|弁護士ドットコムニュース
    https://www.bengo4.com/c_18/n_14510/ @bengo4topicsより
  • 2021年度実施教科書検定結果についての見解

    2021年度実施教科書検定結果についての見解

    2022年4月22日
    日本出版労働組合連合会
    教科書対策部


    2021年度実施教科書検定結果についての見解

     
     
     3月29日の教科用図書検定調査審議会総会を経て、2021年度に行われた教科書検定結果が報道解禁となった。出版労連教科書対策部は、これについての見解を表明する。本見解は、各種報道によって現時点で判明しているかぎりのものであり、詳細については、今後刊行する『教科書レポート2022』(No.65)誌上で表明することとする。検定に関する情報は「静ひつな審査環境の確保」を理由に極度に秘匿されており、5月下旬頃になるまで入手困難である。このこと自体不当であり、少なくとも報道解禁と同時に公開することを求めるものである。

    1.概要
     今回も、全体としては客観的な誤りの修正が最多であった。誤記自体は弁明できないが、誤記が頻発する背景には、各教科書発行者で検定申請の日程に間に合わせるために長時間過密労働が横行していること、その原因は教科書価格があまりにも安いため、必要な人員の確保の困難さがあることを指摘しておきたい。
     後述する「国語表現」や,理科で「生物」で検定意見数が突出して多いことと合わせて,検定制度そのものの正当性を揺るがしかねない事例が見られたことは重大である。
     「令和書籍」が再申請した中学校社会科歴史的分野『国史』は今回も不合格になった。出版労連としては不合格処分を伴う教科書検定制度には一般的には反対である。しかし『国史』は、その歴史修正主義的・復古主義的内容はもとより、事実誤認や誤記があまりに多く、一般図書としても、まして中学校で使用する教材として不適切なものであり、検定申請するに値しないものであったことを厳しく批判するものである。
     
    2.「従軍慰安婦」「強制連行」「強制労働」
     「政府の統一的見解に従っていない」として、「従軍慰安婦」からの「従軍」の削除、アジア太平洋戦争中の植民地とされた朝鮮半島からの労働者の「強制連行」「強制労働」から「強制」を削除させる意見が付けられた。この問題については『教科書レポート2021』で詳述したとおりであるが、該当する検定基準は「閣議決定その他の方法により示された政府の統一的な見解又は最高裁判所の判例が存在する場合には、それらに基づいた記述がされていること」(地理歴史科1-(5))とあり、「最高裁判所の判例」には「軍隊慰安婦」としたものもある(「アジア太平洋戦争韓国人犠牲者補償請求訴訟」判決。2004年11月29日)ことが、2021年5月26日の衆議院文部科学委員会で指摘されている(なお、この質疑では萩生田文部科学大臣(当時)も政府参考人も、この判決を知らないと述べた)。この事実を無視して「政府の統一的な見解」のみを検定に適用したことは、文科省自ら検定基準を歪めて適用した政治的な偏向というほかない。
     そもそも「政府の統一的な見解」としての閣議決定自体、この例に見られるとおり決して政治的に公正なものとは限らず、検定基準である「政治や宗教の扱いは、教育基本法第14条(政治教育)及び第15条(宗教教育)の規定に照らして適切かつ公正であり、特定の政党や宗派又はその主義や信条に偏っていたり、それらを非難していたりするところはないこと」(教科用図書検定基準第2章2-(4))を自2ら逸脱して憚らない検定姿勢にも合わせて強く抗議する。一方、このような検定意見に対し、何とか歴史の事実を伝えようとした教科書発行者も複数あり、その著者および編集者の努力は正当に評価されるべきである。
     
    3.領土問題
     歴史認識同様、「政府の統一的な見解」を書かせる検定意見が今回もつけられ、竹島は日本の固有の領土である、中国政府との間に領土問題は存在しないという日本政府の主張に基づいた記述に修正された。相手国の主張の紹介すら認めず、日本政府の見解のみを書かせるのでは、ナショナリズムのぶつかり合いにしかならず、領土問題の解決にはつながらないであろう。このような検定は、学習指導要領が示す「主体的・対話的で深い学び」を文部科学省自身が否定しているものというべきである。
     
    4.「国語表現」への文学作品の掲載
     2020年度の「現代の国語」での検定で、文学作品(学習指導要領では「文学的な文章」)の掲載をめぐって、ダブルスタンダードというべき検定が行われたが、今回も同様の事態が起こっている。当該ケースは「現代の国語」とは別の教科書発行者であり、検定姿勢が是正されていない。このことは、教科書検定の公正性を揺るがす問題であるので、出版労連としては、引き続き検証と批判を重ね、教科書の自由を守る立場から是正を要求していく所存である。
     
    5.事実を偽る日本政府の国連自由権委員会への回答
     国連自由権委員会は、日本政府の第7回定期報告に先立つ事前質問票(ListofIssues)で、教科書について次のように質問した(原文は英語、外務省仮訳には文書番号および日付の記載なし)。
     
     ”また、教科書における言及を含む慰安婦問題に係る学生及び一般市民に対     する教育の取組につき詳述するとともに、歴史上の出来事、特に「慰安婦」問題について、同問題への言及の削除を意図して、政府当局が学校の教科書策定に影響を及ぼしているとの申し立てに回答願いたい。”
     
    これに対し日本政府は以下のように回答した(同上。パラグラフ155は略)。
     
     ”156教科書検定は、学習指導要領や検定基準に基づき、検定時点における客観的な学問的成果や適切な資料等に照らして、記述の欠陥を指摘することを基本として実施している。すなわち、教科書検定は、教科用図書検定調査審議会による専門的・学術的な調査審議の結果に基づいて行われ、その結果は、そのまま文部科学大臣が検定の合否の判断に用いており、そのときどきの政府の方針や政策又は政治的意図が介入する余地はない仕組みとなっている。”
     
     これは教科書検定の実態に照らせば事実を偽るものというほかなく、出版労連としては、これを厳しく批判するとともに、自由権委員会に情報提供を行い、教科書検定制度の不当性を国際社会にも訴えていく所存である。

    以上

    PDF版:220422_2021年度実施教科書検定結果についての見解

  • フリーライターAさんの裁判の公正な判決を求めるネット署名

    フリーライターAさんの裁判の公正な判決を求めるネット署名

    フリーライターAさんの裁判の公正な判決を求めるネット署名

    日頃から、出版労連の言論・出版・表現の自由や教科書制度問題のとりくみをご支援くださりありがとうございます。

    さて、出版労連には、二つの個人加盟組合があります。その一つが、編集者・ライター・校正者デザイナー・イラストレーター・カメラマンなどのフリーランス(個人事業主、雇用でない労働者)の方が加入する出版ネッツです。

    出版ネッツに所属するフリーライターAさんは、東京の銀座でエステティックサロンを経営するB社と代表取締役C氏を東京地裁に提訴しました。訴えの内容は、不払い報酬の支払い請求と、C氏から受けたセクハラ・パワハラによる精神的苦痛への慰謝料請求です。

    Aさんは2019年3月、C氏から自身の経営するB社のエステ体験記事を執筆するよう依頼を受けました。記事を書くために体験施術を受けた際に、AさんはC氏から下半身を触られるなどの悪質な性被害を受けました。一方でC氏からB社のWebサイト運用・記事執筆の専任として仕事を依頼されており、悩みながらもB社の仕事を続けました。同年7月、SNSとメールのやりとりでB社との業務委託契約を結び、8月1日からは毎日記事を執筆しB社のサイトで公開する仕事を2ヵ月半にわたって行いました。しかし、C氏は記事の質が低いので報酬は払えないと繰り返すようになり、Aさんに対して怒鳴る、恫喝するといったパワハラ行為までも重ねた末に、Aさんが契約終了を伝え、報酬の支払いを求めてもそれを拒否しました。

    裁判において、被告は全面的に争う姿勢で、Aさんの主張をことごとく否定しています。しかし、C氏の主張は業務委託の経緯からAさんに対する言動にいたるまで首尾一貫しておらず、根拠となるような資料も示されていません。

    Aさんのようにフリーランスで働く人は、労働法が適用されないために発注側である企業と受注側であるフリーランスとの力関係において弱い立場に立つことが多いのですが、2022年のハラスメント関連法の改正でも保護対象とはなっていません。発注側からハラスメントを受けた場合、被害者は抵抗すると仕事を失ってしまうという不安に陥り、Aさんのように自分を無理に納得させ仕事を続けようとするケースが少なくありません。

    裁判は、2月16日に結審し、5月25日に判決が言い渡されます。

    公正な判決を求めて、団体署名とネット署名「フリーライターAさんに対する性暴力と嫌がらせ、報酬不払いを許さない! 東京地裁に公正な判決を求めます!」(https://chng.it/KnNXTd4kkC)にとりくんでいます。

    皆様のご支援、ご協力をお願いいたします。

     

    団体署名用紙 PDF:220205_Aさん裁判の公正な判決を求める団体署名
    ※署名用紙に、団体名・代表者名を記入して出版労連までFaxやメールでご返送ください。

    裁判の詳細に関しては、「フリーライターAさんの裁判を支援する会」のブログ(https://withyou-nets.hatenablog.com/)をご覧ください。

  • 出版労連声明「ロシアのウクライナ侵攻に抗議する」

    出版労連声明「ロシアのウクライナ侵攻に抗議する」

    2022年3月1日

    声明「ロシアのウクライナ侵攻に抗議する」

    日本出版労働組合連合会
    中央執行委員会

      出版労連は、ロシアによるウクライナに対する一方的な武力行使に抗議するとともに、ロシアがただちに侵略行為をやめ撤退し、平和的対話による解決をするよう求める。プーチン大統領が核戦力を念頭に核抑止部隊を高度警戒態勢におくよう軍司令部に命じたと伝えられているが、核兵器による威嚇は国際社会全体への脅しといえるものであり、決して許されるものではない。また、ジャーナリストの拘束や、サイバー攻撃が行われているとの情報もあるが、出版労連は言論・出版・表現の自由が保障され、すべての市民のいのちと人権が尊重されることを求める。
    国連憲章は、国連の目的を「国際の平和及び安全を維持すること」とし、「すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない。」との原則を示している。
    2022年2月21日、プーチン大統領は、「ドネツク人民共和国」、「ルハンスク人民共和国」を独立国家として独善的に承認し、「平和維持軍」として軍隊を派兵した。さらに、2月24日、ウクライナに侵攻した。子どもを含む多くの民間人が死傷しているとの痛ましい報道がされている。このことは、国際法に違反する侵略行為そのものであり抗議する。
    出版労連は、結成以来64年間、出版人の一員として、言論・出版・表現の自由と市民の知る権利擁護のために運動にとりくんできた。これらは、平和と民主主義が保障されてこそ実現するものである。出版労連は、平和を守るとりくみを続ける世界中の人々と連帯する。

    PDF:220301声明「ロシアのウクライナ侵攻に抗議する」

    以上

  • 第138回臨時大会 2022年春闘宣言

    第138回臨時大会 2022年春闘宣言

    2022年春闘宣言

    発生から2年以上となる新型コロナウイルス感染症により、世界全体が生活様式の変化を求められています。私たちの労働運動にも多大な影響をもたらし多くの困難も抱えています。収束はいまだに全く見通せませんが、コロナ後を見据えよりよい社会を築くために今できることを考えながら行動していかなければなりません。
    平成以降30年以上にわたり日本の賃金は下がり続けています。世界ではこの間着実に賃金が上昇しており、韓国にも抜かれてOECD各国内で最下位近くにまで下落してしまいました。また、長年の政府による円安誘導によって、輸入品が相対的に高額となり様々な生活必需品も値上がりし続けています。その一方で企業の内部留保は9年連続で最高を更新し続け2020年度末には484兆円に達しています。残念ながらトリクルダウンなどは1滴も落ちてはきません。このようななか2022年春闘でも賃上げ・一時金にこだわったとりくみを求めています。ここ数年官製春闘が取りざたされていますが、私たちが主体的に行動しなければ状況は改善しません。最低生計費が上昇し続ける中で最低賃金も全国一律1,500円への引き上げが必要です。さらに生涯賃金の観点から初任給の引き上げも大切な課題となっています。
    職場環境、労働条件の向上も大切です。コロナ禍で在宅勤務や時差出勤などが多くの職場で緊急的に導入されましたが、恒常的な制度としても合理性が明らかになってきているのではないでしょうか。労働法制改定にともない労働時間の把握が会社の法的義務となりました。過大な長時間労働など見直しを求めましょう。36協定を交渉カードとして活用することもできます。また、中小企業にも適用されたパートタイム・有期雇用労働法を背景に非正規労働者の条件改善にもとりくみましょう。
    パワハラ防止法が4月から中小企業にも適用され、ハラスメントの防止も会社の義務となります。ルール作りと適切な運用を行うためにも「ハラスメント防止・根絶要求書」を提出し具体的な根絶対策を求めていきましょう。セクシュアルマイノリティの権利拡充やジェンダー平等の実現もまだまだ不十分です。現在の労働条件などを点検してみましょう。
    定年延長についてはいまだに労連として統一した方針を出すまでに至っていませんが、年金支給が先送りされそれまでの生活をどうするか、継続雇用制度も含め真剣に考えていかなければなりません。
    非正規労働者の中でも取次ぎで働くなかまの労働条件は特に低く抑えられています。賃金は最低賃金と同水準で、さらなる人件費削減のためシフトカットや早帰しをされることもあります。法律も活用して改善にとりくみましょう。フリーランスは報酬の10%アップを求めています。また、労働者性の拡大、「いきなり切らない」、インボイス制度適用見直しなど、安心して働ける環境を目指しましょう。
    昨年の衆院選でいわゆる改憲勢力が発議に必要な3分の2を超える議席を得ました。これにより改憲への動きが活発になり今年の参院選と同時の国民投票を目指す声も出ています。憲法に縛られる立場の政府が国民を無視して改憲を進めることは許されません。まずは今の憲法を遵守させ言論・出版・表現の自由を守りましょう。また、憲法を守り活かすための諸行動にとりくみましょう。
    世界では米中対立やウクライナ危機などきわめて危険な状況に進んでいます。気候変動も待ったなしで進んでいます。コロナ禍のなかで格差が広がり上位1%の富裕層が世界の個人資産の4割近くを占めるに至りました。日本ではジェンダー平等は全く進まず、外国人は入管で死に追いやられ人権もない状態です。出版界でも業績による格差、コロナ対応における格差などが広がっています。SNSの定着によっても人のつながりより分断が深まっているように感じられます。このような状況下で私たち労働者は団結して行動することが必要です。「ピアソン桐原争議」「二玄社争議」「フリーライターAさんのハラスメントおよび契約料不払い訴訟」「美々卯スラップ訴訟」など多くの争議も発生しています。出版労連の運動はますます重要となっています。私たちの地道な活動が世界をより良い方向に動かしていくことができると信じます。
    以上

    2022年1月27日
    日本出版労働組合連合会
    第138回臨時大会

    PDF版220127sengen