弁護士:平井哲史
長時間過密労働が指摘されて久しい日本の労働現場ですが、残業代が生活の支えになっているのも事実です。
その残業代について支払おうとしない 「ブラック企業」が社会問題にまでなっていますが、
働いた分の正当な対価はしっかり払ってもらいたいですよね。
その残業代はおおざっぱにいうと、次の計算式で算出されます。
<①1時間あたりの所定賃金額×②その月の法定外労働時間数×法定の割増率>
一見すると単純なのですが、この「1時間あたりの所定賃金額」をどうやって算出するのか、
「法定外労働時間数」はどうやって計算するのか、が大 変ややこしくなっています。
①1時間あたりの所定賃金額
【所定賃金額】については、時給制の場合は難しいことはないですが、月給制の場合は1か月の【所定賃金額】を、
月の【所定労働時間数】で割って計算をしないといけません。
しかも、一口に「所定賃金」といっても、基本給のほかにいろんな手当があり、そのうち家族手当や住宅手当など
労働の 対価としての性質をもたない一部の手当は計算の基礎から除外されてしまいます。
【所定労働時間数】は、月の日数や休日日数が変動するため、1年間の平均で算出しますが、
会社や年によって休日となる土日の日数や夏季および年 末年始休暇などが変動しますから、計算がややこしくなります。
なので、普通は私たち弁護士のような専門家に頼まないと計算を間違ったり、そもそも計算ができない、
となりかねませんが、「労務安全情報センター」というところで、詳しい解説をしてくれているので、
自分で計算する場合、参照してみてください。
(http://labor.tank.jp/jikan/zangyo_keisan.html)
②その月の法定外労働時間数
こうして1時間当たりの所定賃金額が算出できると、次は法定外労働時間数の計算になります。
ここでよく誤解されている3つの点に注意しておきた いと思います。
一つは、週休2日制の会社では土日が休日となっているところが多いかと思いますが、
この場合、土日に働いたとしても、その全部が「休日労働」になるわけではないということです。
労働基準法が定める「休日労働」は1週間のうち1日も休みがなかった場合ですので、
土日に出勤したとしても、土 曜日の分は法定時間外労働となり、日曜の分だけが休日労働となります。
二つ目は、法定外時間外労働となるのは1日のうち8時間を超える部分だけではないということです。
労働基準法は1日8時間のほかに週40時間と いう規制を設けていますので。
たとえば月曜日から土曜日まで1日10時間働いた場合、
金曜日までに週40時間+10時間の法定時間外労働をしていることになります。
ですので、土曜日は8時間を超える2時間分だけでなく、まるまる法定時間外労働となります。
三つ目は、割増賃金の対象となるのは法定時間外労働だけですから、
たとえば1日の所定労働時間数が7時間30分の場合、法定の8時間にいたるま での30分については
就業規則や労働協約で割増賃金の対象とすることが定められていない限り、割増は支払われません。
通常の所定賃金の30分ぶん のみが請求できることになります。
「これだけではわからない」という方は労働組合や弁護士に直接相談をしてみてください。
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