第137回定期大会特別声明(ジェンダー平等)

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第 137 回定期大会特別声明

「男らしく」「女らしく」を脱して「自分らしく」生き働ける社会へ変えよう!

「15 歳のころ、人はどっさりいろんなことを、経験する。
あとはそれに慣れっこになって、だんだんそれを忘れてゆく」 ※1

あなたの記憶のなかで、みんな同じように平等だったのは、いつでしたか? 気付いたら、そうでは
ない現実を感じたのはいつでしょう? 受け入れてしまったのはいつでしょう?

コロナ禍のもと、さまざまな格差が可視化されました。在宅勤務可能な職種や企業、正規雇用・非
正規雇用、シフト制、性差、ジェンダーでの格差。性的役割分担に根ざした、ケアは女性、家計は
男性が担うものとの「ケアレスマンモデルの古い時代の考え」がいまだに根深く、給付金が一括し
て世帯主へ給付されたことでも、政府内に女性の就労は家計補助的収入のためとの誤った価値観が
残り続けている、日本社会の「男、めっちゃ有利」 ※2 な残念な社会構造が顕著に可視化されました。
もう、変えていきましょう。

 
男性の非正規雇用率も 5 人に 1 人の 22.8%で、シフト制雇用者は大きな打撃を受けました。さら
に女性の非正規雇用は 56.0%と 2 倍以上にのぼりさらに厳しい状況です。
年末年始のコロナ禍相談村では初めて女性専用相談ブースが設けられ、そのニーズの深さから 3 月
の『女性による女性のための相談会』開催が実現しました。法律家や行政も深刻さに気付き、7 月
には東京都の後援を得て東京第二弁護士会との共催での『女性なんでもでも相談会』へと発展しま
した。

多くの制度はまだまだ女性には使いづらく、相談したくても男性ばかりの相談会には行きづらく話
しづらさが壁となっていました。派遣村から 13 年を経て女性たちが当事者の実状を集めて立ち上
がり、女性が安心できる相談会を作り上げました。当事者である女性が、当事者の声を実現するた
めに立ち上がり、知恵を出し合い奔走し、当事者に必要な変化を現実にしました。
夫婦別姓を議論する委員会も、これから別姓を必要とし選択肢を望む世代は1人もいない、当事者
抜きの議論でした。一斉休校を決める場に、緊急事態宣言による飲食や書店休業や時短を決める場
に、子育て世代、ひとり親世帯、シフト制労働者、さまざまな業態の現場から当事者が参加してい
たら? 違う対策が生まれていたかもしれません。

ひとり親世帯の 9 割は女性です。現在の日本で子どもの 6 人に 1 人が貧困状態にあるのは、女性の
貧困は子どもたちの貧困に直結することの現れです。なぜ、女性の就業率は 7 割を超えるにもかか
わらず非正規雇用で率が高いのか? ケアも仕事も家事もが女性に集中し、子どもたちへの責任は
母親だけが担うものではないことは、だれもが知っているはずですが、決してそうではない現実が
コロナ禍でよりいっそう、可視化されました。

社会の制度設計に女性が参加できる選挙権・被選挙権の誕生はわずか 75 年ほど前です。ほぼ 100%
近い公的制度や法的サポートは男性・女性の二択を基点に設計され、医師免許をはじめとする国家資
格は戸籍名のため、学術論文などでは婚姻前の業績が同一人物によるものと即座に判断されない等、
改姓による大きな実害を生んでいます。離婚時に旧姓に戻す場合、離婚の事実を知られるのもほと
んどが女性です。中国・韓国、欧米諸国をはじめ選択的夫婦別姓の国は非常に多く、同姓は少数派
です。 癌で友人を夭逝した友人を思い、ヘアドネーションを決意した男子中学生。長ズボンで登校した女
子高校生。髪を伸ばすこと、長ズボンでの登校がジェンダーの違いにより校則違反になるのはなぜ
でしょう?ジェンダーで線引きされた痛みに苦しむ子どもたちがいます。多数派が大切にされ、少
数派は大切ではないかのような線引きをする制度設計が暮らしのあちこち存在しています。

マイノリティであるというだけで、ごく普通の日常生活を送ることも難しく、憲法が保障する基本
的な権利や基本的人権すら認められていないのが、いまの日本です。

医学部入試、都立高校の入学試験での男子受験生優遇の合格基準、憲法で保障され、平等だと信じ
ていた学びの場において、ジェンダーにより優遇され、差別されていた事実に子どもたちも教師も
怒りを表明しています。

みなさんの職場をジェンダーの視点で浮かべると、どのような状況でしょうか? 男女雇用機会均
等法が施行されて 30 年以上が経ちました。機会は均等に与えられたものの、入社試験でも、“成績
順に採用すると女子ばかりになり、会社が潰れてしまう。だから男子を多く採用する”……という
理論がいまも企業側に存在にしているのはなぜでしょう?

みなさんの職場の意思決定や運営を担う場はいかがでしょうか? 浮かべてみてください。類似の
背景、経験、価値観が近い人で構成されていないでしょうか?

いわゆるボーイズクラブの弊害は、それ以外の視点に気付かないため、議論に発展せず、多様性を
阻みます。この理不尽な理屈に違和感を覚え、疑問を持ち、変えていかなくてはと気付きながら、
無意識の思い込みに慣らされてきた反省に立ち、昨年末から今年にかけて、わたしたち出版労連は、
日本新聞労働組合連合(新聞労連)、日本民間放送労働組合連合会(民放労連)、メディアで働く女
性ネットワーク(WiMN)のみなさんとともに、日本新聞協会、日本民間放送連盟、日本書籍出版
協会、日本雑誌協会の 4 つの業界団体へ「業界団体および加盟社の女性登用についての要請」を提
出しました。奇しくも東京オリンピック・パラリンピック実行委員会の森喜朗前会長の女性蔑視発
言と重なり、メディア業界の女性管理職の圧倒的な低さが報道され、驚きと批判をもって広く知ら
れることとなりました。

人びとの価値観や考え方の醸成に、本や雑誌、テレビやラジオ番組、メディアの発するコンテンツ
は大きく影響を与え、左右をもします。その作り手、その発信を決定する場が、特定のジェンダー
に偏っていることで、バイアスのかかった無意識の思い込み、アンコンシャスバイアスを生む土壌
をつくってきました。この状態を脱しジェンダー平等の実現を前進させましょう。メディアの中で
も早くから出版業界は女性の採用割合が上がり、すでに 5 割を超える企業もあります。が、昨年実
施した女性管理職割合調査では、編集長・課長クラスまでは女性がいても、役員クラスに至っては
10 倍以上の差があるのが現状です。だれもが働き続けやすい、当事者の声が反映された労働条件と
職場環境、構造になっているとはいえない状況です。「男、めっちゃ有利」の価値観を生み出し、下
支えする構造を、もう、終わりにしましょう。マイノリティもマジョリティもジェンダーに関わら
ず、すべての人が互いを尊重し合い、働きやすい職場、生きづらさのない社会を、わたしたち 1 人
ひとりの絶え間ない努力でつくっていきましょう。

2021 年 7 月 16 日
日本出版労働組合連合会 中央執行委員会

※1『愛をめぐる随想』著:シャルドンヌ 訳:神西 清
※2『マチズモを削り取れ』著:武田砂鉄

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