出版労連・第141回定期大会特別決議 出版の現場に分断と混乱を生み、産業の空洞化と衰退をもたらす インボイス制度の中止・撤廃を求めます
出版労連・第141回定期大会特別決議
出版の現場に分断と混乱を生み、産業の空洞化と衰退をもたらす
インボイス制度の中止・撤廃を求めます
政府は2023年10月から、インボイス制度(適格請求書等保存方式)を、日増しに高まる反対の声に向き合うことなく開始しようとしています。
これまで売上高1,000万円以下の事業者(中小業者や個人事業主、そしてフリーランス)は、免税事業者とされ、消費税納付の義務はありませんでした。インボイス制度では、課税事業者にならざるを得ない状況に追い込まれます。免税事業者のままでいることを選択した場合、課税事業者である取引先からインボイスの登録を求められたり、取引から排除されたり、消費税分の値下げを求められたりするおそれがあります。自らの課税売上にかかる消費税から控除できる仕入れにかかった消費税は、インボイスによるものに限られるからです。
すでに、仕事の発注側から受注側へ、あるいはフリーランス同士で消費税の押し付け合いが始まっています。適格請求書発行事業者にならなければ消費税分を差し引いて支払う、あるいは取引を差し控えるという発注者があらわれています。これらは下請け法違反となります。
日本商工会議所は2023年度の「税制改正に関する意見」で、「消費税インボイス制度の導入延期を含めた対応」を求めています。「同制度が導入された場合、免税事業者が取引から排除されたり、不当な値下げ圧力等を受けたりする懸念があることに加え、発行する請求書の様式変更、システムの入替・改修、受け取った請求書等に登録番号があるかの確認」などがあるとして、「事業者にとって多大な負担が生じる」と訴えました。同意見書は「制度導入後の混乱が避けられない場合は、制度の導入時期を延期すべきである」としています。
「インボイス制度について考えるフリー編集(者)と漫画家の会」が出版業界で働くフリーの編集者を対象にした調査(2022年11月~23年3月実施)によると、インボイス制度が導入されれば「廃業する可能性がある」「廃業することを決めている」が19%、「(インボイス制度を)延期すべきだ」「導入すべきでない」は合わせて94%にのぼっています。
政府は、本年3月末としていた事業者の登録申請期限を9月30日まで事実上延長する措置をとりました。しかしながら、インボイス制度の問題を解消するものではありません。そもそも消費税というものは、裁判所の確定判決(1991年3月26日 東京地裁および同年11月26日 大阪地裁)でも、また、最近の政府答弁(2023年2月10日 衆議院 内閣委員会)でも明らかなように「対価の一部」であって「預り金」ではありません。政府は世間一般に流布する消費税に関する誤解を放置したまま、矛盾に満ちたインボイス制度を実行しようとしているのです。
私たちの働く出版産業において、クリエイティブワークを下支えしてきたのは、低い収入、弱い立場の、フリーランスや中小零細事業者です。インボイス制度は出版の現場に分断と混乱を生み、産業の空洞化と衰退をもたらしかねません。出版社のなかには、受注者の不利益にならないように対応することを表明している社もあります。
出版労連、出版ネッツは、これまでもインボイス制度に対する反対を業界団体などに訴えてきましたが、いよいよ実施時期が迫った第141回定期大会において、出版の現場に分断と混乱を生み、産業の空洞化と衰退をもたらす本制度の中止・撤廃をあらためて強く求めます。
2023年7月14日
日本出版労働組合連合会
第141回定期大会