第133回定期大会 特別決議「出版に働く私たちは、出版、表現の自由を侵す改憲に反対します」

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出版に働く私たちは、出版、表現の自由を侵す改憲に反対します

 

PDF版:190712_tokubetuketsugi_hyougen

 

言論、出版、表現、報道の自由の規制がエスカレートしています。
かつては書けたこと、表現できたこと、放送できたこと、人前で話せたことが、今はできなくなってきていないでしょうか。
官房長官が、特定の新聞記者の質問を敵視しています。
防衛省が、フリージャーナリストの記者会見出席を阻んでいます。
ストーカー行為を規制するための改正東京都迷惑防止条例が、市民の言論、表現の自由、知る権利、報道の自由を規制したい人たちの武器になろうとしています。
森友学園問題、加計学園問題で隠蔽と詭弁に終始した首相は、2001年のNHK番組改変問題以来、政府・与党中枢が意に沿わない報道への介入・干渉を繰り返し、それが容認されてきました。2010年代には特定秘密保護法、「共謀罪」法※を相次いで強行採決し、ついには言論・表現・出版の自由の寄って立つ根拠である憲法21条をも変えてしまおうと目論んでいます。自民党改憲草案は、公の秩序のためには出版、表現の自由は思いのままに制限できるとしています。出版、表現の自由は私たちの到達した、侵すことのできない永久の権利です。改憲で出版、表現の自由を規制し、統制しようとする動きには断固、反対です。
思ったことを口にするのが憚(はばか)られる一方で、虚偽(フェイク)や憎悪(ヘイト)が大手を振って闊歩する時代になってきました。それらを質(ただ)し、真実を伝えることがマスコミ本来の役割であるはずですが、この状況に沈黙をもって加担し、もっぱら政府発表ばかりを伝えようとする現実があります。さらに与党は、豊富な資金や人脈を使って、広告をも意のままに操ろうとしています。
そこに拍車をかけるのが、忖度と同調圧力です。表現する者、メディアに働く者が生きにくい、仕事をしにくい世の中になっていはしないでしょうか。内省と自戒も込めて、そう訴えます。
言葉の重みが限りなく軽んじられている今も、あらためて言葉の力を取り戻す、ねばり強い動きが続けられています。FIGHT FOR TRUTHを叫んだ今年3月14日の官邸前行動は、表現者やジャーナリスト自身が声をあげる画期となりました。
メディア産業、とりわけ出版をはじめとするコンテンツ産業は、多様性をかけがえのない源泉としています。萎縮し、同調圧力に屈してこの多様性を放棄することは、産業の消滅に繋がります。私たちはこれからも、多様性を手放さず、黙りも阿(おもね)りもせず、言葉の力を信じて、自らの良心と職能に忠実に行動していきましょう。

以上、決議します。

2019年7月12日
日本出版労働組合連合会  第133回定期大会

※「特定秘密の保護に関する法律」(2013年)
「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律」(2017年)